今日は8回目のコラムですが、このコラムを収録する直前にアメリカ合衆国の大統領選があり、トランプがついに大統領になってしまいました。これは、私が人生で一番びっくりしたことの1つです。
最初は泡沫候補と言われ、アメリカでもいろいろな批判があり、しかもこれはあるところで実際に出ていた話ですが、トランプを陰で支えてきた大物が大統領選の最中にヨーロッパの極右政党の代表たちと会って「今後、共にやっていこう」と話したそうです。大統領選直後に本人が出てきて、選挙中の激しい言い方はなりを潜めてヒラリー・クリントンをも絶賛し、アメリカに貢献した人物と持ち上げて、温和でまともな人物にみえるようなそぶりをしていました。しかし、トラがネコの皮をかぶっている可能性があります。
大統領選の結果が出たのは、日本時間11月9日の午後でした。日本の株式市場は暴落し、為替もすさまじい円高になったのですが、10日には株も戻し、為替も円安に戻しました。しかし、私はこれから何が起きるか、大変なことがジワジワとやってくるような気がします。どちらにせよ、トランプ現象の底にあった不満(特にアメリカの若い人たち、および白人の没落しつつある、あるいは没落してしまった中産階級)がアメリカおよび世界の今後を左右していくと言ってよいと思います。
トランプ現象には、2つの原因があると思います。
1つはいま言ったアメリカの中間層、特に白人の不満の高まりです。自分たちがこれ以上没落しないように、ヒスパニック系つまり中南米のスペイン語を話す移民をメキシコ国境で壁を作り阻止しようと。そして、現状への不満から変化を求めています。つまり、突き詰めるとアメリカの人口の1パーセントの超富裕層だけがお金を牛耳っていて、自分たちの所にまでお金が降りて来ないという事に対する不満です。
もう1つは、アメリカが長期的に没落して弱体化しているという事です。私は、この2つの現象とは別に日本人にも関係してくる問題でもあるのですが、‘ある世界的な現象’があると見ています。それは、この10年、20年、人間としての幸福感、つまり生きている価値、意味、心から笑えたり、心から喜べる充実した気持ちがどんどん薄れてきているのではないかということです。これは、皆さんも感じているのではないでしょうか。これは恐らくあるものと関係がある、つまりITの進化と関係があるのではないかと思います。
現在、金融の世界においてもITが進化し、AI(人工知能)がファンドなどを運用しています。それが、一般の投資家を排除し始めている。これにも共通した部分があるのですが、ITが進化したことによって人間としての共感、コミュニケーションの喪失ということが起きているのではないでしょうか。
ある雑誌に載っていたのですが、インターネットによってメールが普及したために、同じ会社内で真横に座っている人間同士でも話をせずにメールで通信をするということが頻繁に行われているようです。昔は、「口角泡を飛ばす」という表現のように、お互いに意見をバンバン言い合い、議論をして、人間として向かい合ったものです。今や、それがなくなってきたと感じます。
私も通勤時に感じますが、人の足を踏んでも何も言わない、周りの人には一切興味がない、 やっているのは親指の運動、
つまりスマートフォン。その世界にしか興味がない、何も言葉を発しないという人ばかりです。田舎ではまた少し違うかもしれませんが、東京ではそう感じます。
人間というのは元々、1秒1秒変化している、放っておくと腐ってしまう生物(なまもの)だと思うんですよね。ITの進化によってメールで事が足りる、お互いに感情をぶつけ合うことができない、ましてや今、韓国で、特に若い男性がITのやりすぎで女性と恋愛が出来ないという大問題が起こっています。恋愛というのは、付き合っているうちに最初の1、2ヵ月は蜜月でお互いに笑っていても、本当に深い仲になると喧嘩したり、罵り合いになったりすることがあります。男性は、 それが怖くて生身の女性と付き合えず、ネット上のアイドル(日本だと初音ミクなど)に夢中になるのです。
トレンドと言えばトレンドですが、そのために人間本来の生き物としての、生のリアル感がなくなってきています。だから、電車の中で話もしない、失礼、ごめんなさいとも言わなくなったのでしょう。
この間、帰宅時に電車が空いていたので、いつもより少し足を前に出していたんですね。そこをたまたま通りかかった、赤ちゃんをおんぶした白人の中年男性が私の足先に少し当たったんです。すると、行き過ぎてからわざわざ私の所まで戻って来て「I’m sorry.」と謝ってきたのです。日本人ではあり得ませんね。なんて素晴らしいんだろうと思いました。
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